債務がある場合の遺留分の減殺請求

遺言で相続人であっても遺産をまったくもらえなかったり、
遺留分以下の遺産相続だったりした場合、
遺留分を侵害している相続人に対して
遺留分の減殺請求ができる権利がありますが、
一方では債務についても債権者に支払う義務が発生します。
 
お父様が亡くなり、長男のAさんが相談にみえました。
 
お父様には遺言書があり、
遺産はすべて次男のBさんが相続する内容となっていました。
 
お父様の財産は不動産が5億8000万円、
預金が800万円ありましたが、銀行債務も4億円ありました。
 
相続人は配偶者と長男のAさんを含めて4名。
Aさんは生前に3千万円の贈与を受けていますが、
法定相続分(1/6)として1億300万円を相続できる権利があります。
 
遺留分としては2分の1の5150万円なので、
あと2150万円をBさんから遺留分の侵害分として受け取る権利があります。
 
Aさんの相談は、不足遺留分のほかに
相続債務の額を加算してもらえるのではないかという内容でした。
 
債務については、ブラス財産から控除して
残りの財産を分割するのが通常の方法と理解していたので、
弁護士にも相談しました。
 
 
たとえ相続債務分をもらっても支払う義務もあるので、
通常は相続債務分をプラス財産から控除した残りを
分割することになるという回答でした。
 
Aさんが心配されていたのは、
Bさんが債務を負担できなくなった場合に
Aさんに債務支払い義務が発生しても負担できないということでした。
 
 
最高裁判所の過去の判決によると、
相続人のひとりが財産全部を遺言で相続した場合は、
遺留分権利者に相続債務分を加算することはできない(平成21年3月24日判決)。
ただし、生前に遺留分権利者が贈与等を受けていた場合には、
負担すべき相続債務を加算することができる(平成8年11月26日判決)、
となっています。
 
過去に、遺留分のほかに相続債務分を加算して
支払った判決事例はありましたが、
今回のケースでは、相続債務分をBさんに請求しても
相続した財産が不動産であり、現金も少ないので、
加算してもらうのは困難ではないかというお話をAさんにしました。
 
また、債権者の銀行に、
Aさんの債務支払い義務発生について確認したところ、
抵当権が設定されているので、
Aさんに債務支払いをしてもらうことはまずありませんとの回答でした。
 
Aさんは生前贈与3000万円を受けているため、
相続債務分を控除した残りの財産(2億1800万円)の分割では
遺留分侵害にならないことから、請求は取りやめました。
 
 
本案件から学んだこと、思ったことは以下のとおりです。
 
◆債務を含んだ財産相続では、
分割方法と相続人の支払い能力等によっては、
債務負担分を加算できること
 
◆遺言を扱う時は、債務の負担についても
遺言内容に加えてもらうと、
遺言者の意思が明確になっていいのではないか
 
 
争いを避けたいと思っていた遺言者の想いが
伝わりやすい遺言書作成のお手伝いをしていきたい
と感じる案件でした。
 
また1つ大きな学びとして、今後の相談に活かしていきたいと思います。