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戸籍上は親子ではなかったけれど

A子さんは、戦争で若くして亡くなった姉Bのご主人と結婚をしました。
 
Bさんには既に2人のお子さまがいらっしゃり、
A子さんは3人のお子さまを授かりました。
 
すなわち5人のお子さま達は、
父親は同じで母親は異なる、
いわゆる異母兄弟姉妹ということになります。
 
 
後妻がある場合、
子どもは前妻とは他人の関係であるのが一般的ですが、
昭和初期の頃には戦死される方が多く、
このようなケースは決して珍しくありません。
 
ただ、養子縁組をしているかどうかについては、
家庭によって分かれるところです。
 
A子さんは晩年になって、ご主人を亡くされた時に
戸籍を確認することになりました。
 
そのとき、自分に万一のことがあった場合、
上の2人のお子さまには相続権がないことを知りました。
 
日本の法律ではそうなっています。
 
A子さん家族はとても仲が良く、
その後も年老いたAさんを5人の子ども達がそれぞれ面倒を見てくれていたので、
A子さんは、あえて養子縁組をしないことを選択しました。
 
そして、A子さんは自分が亡くなった後も
子ども達がお互いに仲良く、
これまで通り助け合って生きていってほしいとの願いを込めて、
自筆の遺言書を最期に書き残しました。
 
 
その自筆証書遺言は、
内容は法律上では不完全なもので、
財産の全貌や分配の割合などは特筆されていませんでしたが、
母として子を想う気持ちを伝えるには
十分すぎる大きな存在価値を持つものでした。
 
 
その遺言書では遺産の分配は確定できませんでしたが、
法定相続人となったお子さま3人は、
法定相続人とならなかった者たちとも相談し、
裁判所の検認を受けることもなく、
5人平等に財産を分けることを全員が承諾しました。
 
法定相続人とならない上の2人のお子さまは、
代表して多くを相続した1人から、
今もまだ年間贈与税の基礎控除額を下回る金額を、
大好きだった母親A子さんの毎年の命日に受贈しています。
 
今回のように、自筆証書遺言が法的効力をなさなくても、
母の子への愛情が伝わり、
円満に相続手続きを終えることができるケースは少なくありません。
 
自分の想いを思いのままに書き残す、
これが思い出も財産も引き継ぐ次の世代にとって、
幸せなことだと強く感じる手続きで
 
また1つ、私自身にも素敵な思い出を作っていただいた手続きとなりました。