知られざる相続人の範囲とは?事例ごとに解説します

相続できる権利を相続権と言いますが、その範囲を正確に理解している人は少ないと思います。
相続では、故人の財産ばかりに気を取られがちですが、『誰が相続権を持つ相続人なのか』を正しく理解しておかないと、後々大変なことになるケースもあります。
今回は事例ごとに、相続権があるかないかを解説していきます。


【事例1】
Aさんは妊娠8カ月の時期にご主人を交通事故で亡くされました。
胎児も相続人となるため、Aさんと胎児の共有名義で不動産(ご主人名義のもの)の登記申請をするつもりです。

→【○】
胎児の出生前には遺産分割などはできませんが、相続登記をすることは可能です。
この時の登記簿の記載は「亡何某妻何某胎児」となります。


【事例2】
亡くなったBさんは子どもがおらず、両親もすでに他界、兄弟もいません。唯一の肉親はいとこだけです。いとこは相続人として、Bさんの財産を相続できます。

→【×】
いとこには相続権はありません。
ただし、家庭裁判所で特別縁故者として認められれば、遺産の一部を引き継ぐことができます。


【事例3】
CさんはDさんと結婚しました。2人はそれぞれ再婚で、CさんにはF君という男の子が、DさんにはGちゃんという女の子がおり、4人家族として暮らしてきましたが、Cさんが病気で亡くなってしまいました。Cさんは、F君とGちゃんの3人で財産を分けることにしました。

→【×】
Cさんから見ると、Gちゃんは連れ子です。そして、連れ子には遺産を相続する権利はありません。
ただし、生前にCさんがGちゃんと養子縁組をしていれば、Gちゃんは相続人になることができます。


【事例4】
妻であるHさんには事実婚関係の夫Iさんがおり、先月Iさんが亡くなりました。HさんとIさんは婚姻していませんでしたが「40年近く生計同一をしていた」という要件を満たしているので、HさんはIさんの相続人になります。

→【×】
事実婚という関係は、何年経とうとも相続人にはなれません。
ただし、故人に相続人が全くいなかった場合、特別縁故者として財産の一部を引き継ぐことができます。


【事例5】
先ほどのHさんとIさんの間にはJ君という子がいました。J君を父Hさんは認知していたため、J君はHさんの財産を相続することができます。

→【○】
事実婚カップルの間に子どもが産まれた場合、子どもは母親が筆頭者となる新しい戸籍の中に入ります。この時、戸籍の父親の欄は空白です。
法律上は父と子は親子関係でないため、この状態のまま父が亡くなると、子は相続人にはなれません。
しかし、父親が子を認知すれば、空白の父親の欄に父親の名前が入り、法律上の親子関係が結ばれ、相続人になることができます。
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