株を現金化できない中で起きた、暴落の悲劇

亡くなったAさんは株取引が趣味で、多くの株をお持ちでした。

奥様であるBさんは、ご自身は株取引をしたことがないので、Aさんの株は売ってしまって現金化しようと考えていました。
Bさんが証券会社に「夫が亡くなったので株を現金化したい」と伝えると、担当者から驚きの言葉が。

「株は株でしか相続できません。まずはBさんの証券口座にAさんの株を移して、そこからご自身で現金化してもらう必要があります」
「そしてBさんが株を受け取るには、そもそもAさんの相続人全員の承諾が必要です」

簡単に現金化できると思っていたBさんはびっくり仰天。
特に頭を悩ませたのが、「相続人全員の承諾」です。


実はAさんには前妻がおり、前妻との間に子ども(Cさん)がいました。
つまり今回のAさんの相続人は、Bさん、Cさん、Dさん(AさんとBさんの子ども)の3名だったのです。
BさんはCさんと会ったこともなく、どこに住んでいるかも知りません。
頭を抱えたBさんは、専門家に相談に行きました。

専門家から、「もしもCさんが承諾してくれなければ、調停や裁判になるので、株を現金化できるのはだいぶ先の話になりますね」と言われてしまいます。

専門家がCさんの住所を探し出しましたが、案の定Cさんは「協力したくない」という態度でした。

予想通り、遺産分割の話し合いは長期化しました。そんな中、世界を揺るがす大事件が起きます。
そう、リーマン・ショックです。
Aさんの持っていた株にも大きな影響があり、株価が日に日に下落していきました。

ようやくCさんとの話合いも決着し、Bさんの証券口座にAさんの株が相続(移動)されました。
ただ、Aさんが亡くなった時点と比べて、株価は半分ほどになってしまいました。
さっさと相続できて現金化していれば、こんなことにはならなかったのに・・

このトラブルはどうすれば防げた?
①生前にAさん自身が株を現金化しておけばよかった。
⇒今回は、「遺産分割協議が長引いた間に株価が暴落した」ことで起こったトラブルです。
もしも生前にAさんが株を現金化していれば、暴落など関係がなかったのです。

②「株は全てBさんが相続する」という遺言書を書いておけばよかった。
⇒遺言書があれば、「相続人全員の承諾」は必要ありません。書いている内容の通りに、相続人が相続することができます。
今回のケースでは、もしAさんが「Bさんに株を全て相続させる」といった遺言書を残していれば、株の移動にCさんの承諾は必要ありませんでした。

ただ、遺言書には遺留分という「相続人が最低限相続できる額」を記載しておく方が好ましいケースがあります。
どのような遺言書の内容にするのが最適解なのかは、財産内容によって様々ですので、一度専門家に相談してから作成するのが良いでしょう。
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