相続人が行方不明!?まさかの居場所とは

「相続人の方がどこにいるか分からないんです」
無料相談に来られたAさんは、途方に暮れた表情でそうおっしゃいました。
詳しく話を聞いてみると、夫のBさんが亡くなり、Aさんは後妻とのことでした。
Bさんには前妻との間にCさんがおり、そのCさんの行方が分からないとのことでした。

相続手続きには、相続人全員の印鑑証明や実印が必要
Bさんの遺産としては、不動産や定期預金がありました。
相続手続きでは、相続人全員の印鑑証明書や実印が必要です。

不動産の名義を変えたり、定期預金を解約払戻しするには、Cさんとどうしても話をする必要があるのです。
生前にBさんはCさんのことを詳しく話さなかったこともあり、今現在Cさんがどこに住んでいるのかなど全く分からないと語るAさん。
そこで行政書士の力を借りて、Cさんの住民票を取得しました。

Aさんは覚悟を決めて住民票上のCさん宅に向かいましたが、そこには人が住んでいる気配が全くありません。近隣の方に聞いてみますが、最近人の出入りは全くないとのことでした。

住民票上の住所がもぬけの殻ということで意気消沈したAさんでしたが、このままだと手続きが一向に進みません。
そこでAさんに、家庭裁判所で「不在者財産管理人」の申立てを行ってもらいました。

不在者財産管理人とは、相続人の中に行方不明者がいる場合、弁護士などに管理人になってもらい、その相続人が相続すべき財産を管理してもらう制度です。この申立てがされると、家庭裁判所が職権で不在者の調査を行い、不在が事実であるかの確認をします。

申立を行ってから数週間が経ったある日、Aさんの電話に家庭裁判所から電話が入ります。
そこで驚きの事実が告げられます。

Cさんのまさかの居場所とは・・・
なんとCさんは服役中だったのです。
今回は「相続人が見つかった」ということで、不在者財産管理人の手続きはここでストップ。
通常の「相続人と相続人の遺産分割の話し合い」を行います。

直接AさんとCさんは面会の場で話をして、法定相続分で遺産を分割することの了承を得ましたが、服役中ではCさんの実印や印鑑証明書を取得することができません。

そこで今回は実印の代わりに拇印を、印鑑証明書の代わりに「刑務所長による奥書証明」を代用として使用することになりました。
それらを使って、Aさんの預金の解約払戻しや不動産名義変更は無事に完了。
約1年近くの数々の困難もようやく終わりを迎え、ホッと胸をなでおろすAさんでした。

このトラブルはどうしたら防げた?
相続人同士が疎遠であったりすると、「居場所が分からない」ことはよく起きます。
このような場合、残された相続人はAさんのように大変苦労されることもあります。

今回のケースだと、Bさんが遺言書を残していれば、Cさんの実印や印鑑証明書は不要であったため、Aさんもここまで大変な思いをせずに済んだことでしょう。

今回は相続手続き完了まで1年近くかかってしましたが、遺言書があれば最短1~2カ月ほどで全ての手続きが完了していたことでしょう。

遺言書は「大切な方の苦労を大きく軽減してくれる」のです
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