介護してきた親族と、してこなかった親族の相続
Aさんは兄弟であるBさんの介護をしています。
Bさんには子がおらず、両親も既に他界しているため、Aさんが一緒に住んで面倒を見ていたのです。
Aさんは仕事の傍ら、朝のデイサービスの送り迎えや病院への付き添いなど、親身にBさんのお世話をされていました。
他に兄弟としてCさんがいましたが、東京在住のため介護に参加はしていません。
この状況が続いた後、Bさんはお亡くなりになりました。
葬儀が終わり、一段落したある日、AさんとCさんは遺産の分け方について話し合いをします。
Cさんは、「Bの遺産は法定相続分通り2分の1ずつで分けよう。これが平等だ」と言いました。
当然、Aさんは黙っていられません。
「私は長年Bの介護を一人で続けてきたのよ。どうして長年介護を続けてきた私と、あなたが同じになるの?私の方がたくさん相続できないのは納得できない!」
法律では、実は介護は報われにくい
「寄与分」という制度をご存知でしょうか?
これは「故人の介護などを行い、その方の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人は、遺産を多めに相続できる」という制度です。
この寄与分の額は、まずは相続人間の話し合いで自由に決めて問題ありませんが、争いなどで決まらない場合は家庭裁判所の調停や審判で額が決まります。
もしも家庭裁判所が決める場合、Aさんはこの寄与分を認めてもらうために多くの条件を突破しなければいけません。
・介護を相当期間していたこと(最低1年)
・介護に専念していたこと(仕事をしながらではなく、専業のヘルパーレベルを求められます)
・寄与分の主張を裏付ける客観的な証拠の提出
上記のような厳しい条件をクリアしなければならないのです。
簡単に言うと、「その介護は親族だったらして当然ですよね」のラインを超えていないといけないのです。
ちなみに、病院や施設に入所していた期間の寄与分は認められません。
そして仮に認められたとしても、Aさんの2分の1だった法定相続分が5分の4になる・・といった簡単なものではありません。
思っていたより低い金額に落ち着くことがほとんどです。
つまり、法律では介護は報われにくいのが現状なのです。
どうすればよかった?
それではAさんが報われるためには、どうすればよかったのでしょうか?
まずは、Bさんに『Aさんが多く相続する』という内容の遺言書を書いてもらっておくべきでした。
他には、Aさんが受取人となる生命保険に加入してもよかったでしょう。生命保険は受取人固有の財産になり、遺産分割の対象とならないため、かなり使い勝手が良いものです。
「どんな準備をしておくべきか?」は人によりケースバイケースです。
気になる方は、一度専門家に相談しておくことをお勧めいたします。