貸金庫に遺言書を入れてはいけないワケとは!?

「自分が亡くなった時は、銀行に言って貸金庫を開けてもらいなさい。そこに遺言書を入れているから」

ご高齢のAさんは、奥様であるBさんが自分の相続で困らないように、遺言書を作成していました。
というのも、2人には子どもがいないため、Aさんが亡くなった時はAさんの兄弟(Aさんを除いて4人います)とBさんが相続人になるからです。

Aさんは本やネットから「遺言書を書いておけば相続人全員から実印が不要になる」という知識を持っていました。
そのため、「Bさんが全て相続する」という内容の遺言書を作成され、銀行の貸金庫に保管していたのです。

何年か経った後、Aさんは病気でお亡くなりになりました。

Aさんの言いつけ通り、Bさんは銀行へ行って「主人が亡くなったから貸金庫にある遺言書を出してほしい」と伝えました。

貸金庫を開けるために、相続人全員の実印が必要!?
「申し訳ありませんが、貸金庫を開けるためには相続人全員の同意(実印)が必要です」

予想していなかった銀行員からの返答に、Bさんはびっくり仰天。
なんとBさん1人では貸金庫を開けることができないというのです。

これは、銀行が相続トラブルに巻き込まれないための措置です。

貸金庫の中身にもしも財産があった場合、それは相続財産であり、
仮に一部の相続人が勝手に持ち去った場合、他の相続人の権利を侵害することになってしまいます。

このようなトラブルに銀行として巻き込まれないために、相続人全員の同意を求められるのです。

Bさんは何度も「貸金庫の中に遺言書があり、『私に全財産相続させる』と書かれている」と説明します。
しかし、暖簾に腕押しで全く取り合ってくれませんでした。

どうすればよかった?
遺言書の保存先として、銀行の貸金庫は避けましょう。

同意があれば開けられるとは言っても、明らかに自分が不利になりそうな遺言書だった場合、他の相続人が協力してくれない可能性もあります。

もしも、ご自宅以外で遺言書を保管しておきたいなら、公証役場がお勧めです。

公証役場なら貸金庫と違って、特に保管料もかかりません。

ただし、公証役場で作成した「公正証書遺言」でないと預けることはできません。

もしもご自身で書かれた「自筆証書遺言」の場合は、法務局に預けるのがいいでしょう。
手数料3,900円だけはかかりますが、手軽に預けられるのでお勧めです。
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