その放棄では、借金まで放棄できないかも・・・
Aさんの元に、叔父(Aさんの父の兄弟)が亡くなったと叔父の妻であるBさんから連絡が届きました。
話を聞いてみると、叔父さん夫婦には子どもがいなかったため、叔父さんの相続人はAさんとBさんの2人になるというのです。
(Aさんの父は既に亡くなっています)
Aさん的には、特に財産を分けてほしいという気もさらさら無かったので、「僕は叔父さんの相続は放棄するよ」と伝えます。
その後、「全ての財産をBさんが相続する」という内容の遺産分割協議書が届き、快くそれに署名捺印をしました。
半年ほど経ったある日のことです。
Aさんの元に叔父さんの債権者であるという会社から連絡がありました。
どうやら叔父さんは隠れて借金をしていたようです。
Aさんと叔父さんの債権者は、次のような会話をしました。
Aさん「私は叔父さんの相続は放棄していますよ。Bさんに言ってください」
債権者「家庭裁判所で相続放棄の手続きをしたんですか?」
Aさん「・・家庭裁判所?そんな大層なことはしていません」
協議書での放棄では借金は逃れられない!?
債権者「家庭裁判所での相続放棄でないのであれば、相続人の地位は残っています。相続人として借金を払ってください」
それを聞いたAさんは驚き、慌ててBさんに連絡を入れます。
結果としてBさんが借金を支払ったおかげで、Aさんは特に借金の返済をする必要はありませんでした。
しかし、相続を放棄したのに借金を支払わないといけないなんてどうして・・と驚くAさんでした。
どうすればよかった?
実は相続において「放棄」は2種類あります。
それが財産放棄と相続放棄です。非常によく似た言葉ですが、実は意味が全く違います。
財産放棄は、Aさんのように「何も自分は相続しない」という内容の遺産分割協議書に署名捺印することです。
『0円相続』と言われたりもします。
ポイントは財産放棄では相続人の地位は残っているので、後から借金等が見つかっても、返済義務があるという点です。
相続放棄は、家庭裁判所に申立てをして、「相続人の地位そのものを放棄する」手続きです。
相続人でなくなるので、借金から完全に無関係となります。
仮に遺産分割協議書に「負債は○○が負担する」と書かれていても、債権者は相続人全員に「借金を返してくれ」と言えることは注意が必要です。
ただしこの場合、相続人間では「協議書に○○が負担すると言っているのだから、○○が支払ってよ」と主張することはできます。
もしも借金などがご不安な場合は、相続放棄の手続きが必須です。
財産放棄と相続放棄の違い、ぜひ覚えておいてください。