凍結された銀行口座からお金を引き出せる!?
「主人(Bさん)が亡くなって銀行口座が凍結されてしまいました。どうすればいいでしょうか?」
Aさんは慌てた様子で、専門家に相談に来られました。
AさんBさんご夫婦は、基本的にBさんの預貯金で生活されていたので、
Bさんの銀行口座が凍結されると、Aさんは生活していくのが苦しく、さらに葬儀費用も現在払えていないとのことでした。
預貯金は自動的に凍結されるわけではありません
よく勘違いされていますが、人が亡くなると自動的にその人の銀行口座が凍結されるわけではありません。
銀行に、「亡くなった事実」を伝えると、凍結されてしまうのです。
今回、Aさんは早々にBさんが亡くなったことを銀行に伝えてしまっていました。
そのため、3,000万円ほど入っているBさんの銀行口座は凍結されてしまっています。
正攻法でいく場合、Bさんの預金を解約払い戻しするには、Bさんの相続人全員の同意としての実印と、全員の印鑑証明書が必要です。
今回の問題は、AさんBさんの子2人のうち1人が海外にお住まいであることです。
相続人が海外にいると、相続手続きに時間がかかります
相続人が海外にいる場合、印鑑証明書の取得が出来ません。
この場合、その国の領事館や大使館に出向いてもらい、印鑑証明書の代わりにサイン証明を貰う必要があります。
ややこしく時間がかかることが予想されたため、「何とか葬儀費用だけでも、先におろせないでしょうか?」と語るAさん。
こういう場合に力を発揮するのが、「相続預金の仮払い制度」です。
一定の金額までは、相続人の同意が無くても払い戻すことができる!
預金の仮払い制度とは、相続人全員の同意が無くとも一定の金額を払い戻すことが出来る制度です。
一定の金額とは、「相続開始時の口座の預金額」×「3分の1」×「払い戻しを行う相続人の法定相続分」で計算されます。
今回の場合、「3,000万円×3分の1×2分の1」となり、500万になります。
ただし、計算結果が150万円を超える場合は、150万が上限となります。
つまり、Aさん単独で150万円を引き出すことができるというわけです。
これは口座ごとに計算して引き出すことができるため、複数の口座をお持ちの場合、さらに多くの金額を引き出すことが可能です。
仮払い制度を上手に使いましょう!
Aさんはこの仮払い制度を利用し、何とか葬儀費用の支払いに成功しました。
その後、海外在住の子から無事にサイン証明が届き、Bさんの預金を全額引き出すことが出来ました。
実際の相続手続きでは、「相続人が遠方に住んでいる」「相続人の仲が悪い」「相続人がどこに住んでいるか分からない」等、様々な理由で実印が揃いにくいケースが見られます。
必要であれば、この相続預金の仮払い制度を上手に活用することをお勧めいたします。