海外に相続人がいるなら、遺言書は必須!?
AさんとDさんは、どちらも去年夫を亡くし、子どもが海外在住という共通点があります。
しかし、相続についての印象は大きく異なりました。
Aさん:「相続ってこんなに大変なのね」
Dさん:「私はそこまで大変じゃなかったわ」
なぜ同じ境遇のお二人なのに、ここまで印象が違うのでしょうか?
その違いを生んだのは、「遺言書があったかどうか」でした。
海外に相続人がいる場合、領事館でサイン証明が必要
相続手続きには、基本的に「遺産分割協議書」と「印鑑証明書」が必要です。
遺産分割協議書は、相続人全員が『誰が何を相続するか』に合意し、署名捺印(実印)する書類です。
そして印鑑証明書は、住民票のある日本の住所地の役所で登録するものです。
つまり海外に在住の場合、印鑑証明書が登録出来ないので取得も出来ないのです。
そのため海外在住の相続人は、大使館や領事館で印鑑証明書の代わりとなる「サイン証明」を取得しなければなりません。
遺言書があったご家族と無かったご家族の違い
亡くなったBさんの相続人は、奥様であるAさんと海外在住である息子のCさんです。
Bさんは「うちは家族の仲が良いから遺言書はいらない」と遺言書を遺されてはいません。
Cさんは手続きに必要なサイン証明を取るため、遠方の領事館まで何時間もかけて訪問し、
領事館職員の前で遺産分割協議書に署名しサイン証明を取得しました。
しかし、日本に送った後に手続き先で書類に不備が見つかり、再度同じ手続きをやり直す羽目に。
結果、相続手続き完了までに半年以上かかってしまいました。
一方、Dさんの夫であるEさんは「全財産をDと長男であるFに2分の1ずつ相続させる」という遺言書を残していました。
そのため、Fさんは海外在住でしたが、遺産分割協議書やサイン証明は不要となり、スムーズに相続が進みました。
わずか2か月ほどで、不動産は共有名義に、預貯金も分配されました。
海外に相続人がいる場合、遺言書は必須です
遺言書があれば、手続きは圧倒的にシンプルになります。
特に相続人が海外にいる場合、煩雑な手続きが一気に省略されるため、負担を大幅に軽減できます。
仲の良い家族こそ、「遺言書がなくても揉めないだろう」と考えがちですが、
現実には手続きの複雑さに悩まされるケースが少なくありません。
家族のためにも、遺言書を準備しておくことが、思いやりのある選択です。