要注意!?遺贈と遺贈寄付の落とし穴

ご高齢のAさんは、いわゆる“おひとり様”。甥っ子が1人いますが、長い間会っていません。
Aさん宅の右隣にはBさん宅、左隣にはC会社があり、どちらにも長年とても親切にしてもらっています。

そんなAさんには悩みがありました。
「私が亡くなった後、この家はどうなるのかしら…?」

ある日、Aさんは思いつきます。
「そうだわ!いつも良くしてくださるお隣さんに、この家をもらって頂こう!」
善は急げ!とばかりに早速Aさんは遺言書を作成しました。

個人(Bさん)に遺贈した場合に起こること
Aさんの家(土地・建物 計4,000万円)を遺贈でもらったBさん。
ある日、税務署から「お尋ね」が届きます。

Bさん「えっ!?相続税と不動産取得税がかかる!?私が自分のお金で払うの…?」

実は、遺贈により個人が財産を取得した場合、遺産総額が相続税の基礎控除額を超えていると、
受け取った側に相続税が課税されるのです。

さらに、故人の「配偶者」「子」「親」「代襲相続人の孫」以外が受け取る場合、相続税は2割加算となります。

また、「〇〇の不動産を遺贈する」といった特定遺贈では、不動産取得税も発生します。
(「全財産を遺贈する」等の包括遺贈では、原則として不動産取得税はかかりません)

法人(C会社)に遺贈した場合に起こること
では、C会社に家を遺贈した場合どうなるでしょう?

何も相続しなかった甥っ子は、税務署から思わぬ説明を受けることになります。

甥っ子「え!?叔母の遺産をもらってないのに、税金を払えだって!?」

実は、家の時価(4,000万円)と購入額(2,000万円)との差額2,000万円は、「みなし譲渡所得」として扱われます。

ただし、ここで課税されるのは、あくまで亡くなったAさん(被相続人)です。

もっとも、Aさんが亡くなっているため、その納税義務は法定相続人である甥っ子が承継することになります。
つまり、甥っ子は“何も相続していないのに税金だけ負担する”という事態になってしまいました。

さらに、遺産を受け取ったC会社にも問題があります。
法人へ遺贈があった場合、受け取った利益に対して法人税が課税される可能性があるのです。
(公益法人等への遺贈は、原則として法人税がかからないケースがあります)

トラブル回避のためには、どうすれば良かった?
遺贈や遺贈寄付は、想いを実現できる制度です。
しかし、準備不足のまま進めると、思わぬ税負担やトラブルにつながることがあります。

相続人以外へ財産を遺したい場合は、次のような点を事前に検討しておきましょう。

•受遺者に受け取る意思があるか確認する
•不動産を売却し、税金等を支払った後の現金を遺贈する
•納税資金まで考慮した内容にする
•遺言執行者を定め、手続きを円滑に進められるようにする
•相続放棄も含め、相続人への影響を事前に検討する

例えばAさんが、
「自宅を売却し、税金や諸費用を差し引いた残りの現金をC会社へ寄付する」
という内容の遺言にしていれば、甥っ子が納税だけを負担する事態は避けられた可能性があります。

“想い”を確実に届けるためには、「誰に」「何を」「どう渡すか」まで考えた遺言設計が大切です。

監修:長田会計事務所 税理士 長田雅子

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