元気なうちの準備が、家族を助けた話

「まさか、こんなに早く母の認知症が進むとは思っていませんでした」

そう話すのは、70代のお母様を持つAさんです。お母様は一人暮らしで、自宅のほかに古い賃貸アパートも所有していました。

数年前までは元気に家賃管理や修繕の手配をしていましたが、少しずつ物忘れが増え、通帳や印鑑の場所も分からなくなることが増えていきました。

そんな中、Aさん家族は、専門家のすすめで「家族信託」をすることにしました元気なうちに決めた、家族の備え
家族信託とは、親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産の管理を託しておく仕組みです。

たとえば、将来認知症などで判断能力が低下した場合でも、契約内容に沿って、家族が不動産の管理・修繕・売却などを進められるようにしておくことができます。

Aさんの場合、お母様の自宅と賃貸アパートを、息子であるAさんが管理できるようにしていました。ただし、Aさんが自分のために自由に使える財産になるわけではありません。あくまで、お母様の生活費や介護費、施設費用のために活用する目的でした。

最初は親族の中にも「まだ元気なのに、そこまでする必要があるの?」という声があったそうです。Aさん自身も、少し大げさかもしれないと思っていました。

認知症が進み、必要になったお金
しかし、その2年後、お母様の認知症が進行。施設入所が必要になりました。

そこで問題になったのが費用です。施設費用をまかなうため、空き家になった自宅を売却するか、賃貸アパートを修繕して家賃収入を確保する必要がありました。

もし家族信託をしていなければ、お母様自身が売買契約や大きな修繕契約を判断して結ぶことが難しく、成年後見制度の利用を検討しなければならなかったかもしれません。

もちろん成年後見制度も大切な制度です。ただ、財産の処分には家庭裁判所の判断が関わることもあり、家族の希望どおり、すぐに柔軟に進められるとは限りません。

「やっておいてよかった」と思えた瞬間

Aさんは、家族信託の契約に基づき、アパートの修繕を進め、安定した家賃収入を確保できました。さらに、空き家となった自宅についても、必要に応じて売却を進め、その資金をお母様の施設費や生活費に充てることができました。

「もし信託をしていなかったら、今ごろ何も動かせずに困っていたと思います」
Aさんはそう振り返ります。

家族信託は、相続税対策というよりも、親が元気なうちに将来の財産管理の道筋を決めておく制度です。
特に不動産を持っている家庭では、認知症によって「売れない」「貸せない」「修繕できない」という問題が起こることがあります。


「元気なうちに決めておく」
それが、残された家族を助ける一番の備えになるのかもしれません
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