簡単な相続税対策を事例で解説!

「もしかしたら、相続税を払わないといけない財産状況かもしれません・・・」
ご相談に来られたAさんは、そうおっしゃいました。
Aさんは医者から1年の余命宣告を受けており、ご自身が亡くなった後のことを心配されておりました。
今回は生前の相続税対策について、Aさんの事例を基に解説します。

まずは自身の相続税の基礎控除額を知る

相続税は「3,000万+(相続人の数×600万)」で基礎控除額が決まります。
亡くなった人の総財産が、この基礎控除額を超えていると、超えた部分に対して税金がかかるのが相続税です。財産額が基礎控除額以下であれば、申告すら必要ありません。
この総財産とは、預貯金や不動産や株などの、亡くなった人が死亡日に持っていた全ての財産です。
Aさんには奥様と子供が1人いらっしゃるので、推定相続人は2人。
基礎控除額は4,200万円になります。


自身の財産状況を正しく把握する
Aさんの場合、「亡くなった日時点で総財産が4,200万円を超えていると相続税がかかる」というボーダーは分かりました。
次に行うのは、Aさんの現在の財産を正しく評価することです。

評価方法として難しいのは、不動産でしょう。
Aさんの場合は、現在お住まいのご実家がご自身の名義です。
不動産は、土地は路線価価格(路線価のない地域は倍率表)で、建物は固定資産税評価額で評価します。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税納税通知書に記載されています。
路線価に関しては、国税庁のHPなどで調べることができます。

確認すると、Aさんの不動産は建物が500万円で土地は2,000万円でした。
預金は現在2,000万円で、その他の財産は特にない為、Aさんの現在の総財産は合計4,500万円でした。


贈与をする場合、亡くなった時の持ち戻しに注意!
「300万ほど基礎控除額を超えているのですね。じゃあ、その額を子に生前贈与しておこうかな」とおっしゃったAさん。
ただ、何も考えずに大きな額を生前贈与してしまうと、受け取った側が贈与税を納めないといけないことになってしまいます。

贈与は暦年贈与の枠内でおこなうのが良いでしょう。
暦年贈与とは、1年間に贈与額が110万円以下であれば、受け取った側は贈与税がかからないというもの。
この枠内であれば、贈与税を発生させずに自分の財産を減らしていくことが可能です。

しかし、Aさんの場合は実はこれも得策ではありません。
亡くなった人が相続人に行った過去3年間分(2024年の以降の贈与は7年に延長)の贈与は、贈与分を遺産額に持ち戻さなければならないのです。
Aさんは1年の余命宣告を受けているということもあり、暦年贈与でご自身の預金を減らしても、結局は亡くなった時に贈与分を持ち戻さないといけない可能性が高いのです。

生命保険の基礎控除額を利用する
Aさんのケースだと、生命保険の非課税枠を利用するのがよいでしょう。
というのも、生命保険の死亡保険金には「『相続人の数×500万』まで非課税(0円評価)になる」という枠があります。
推定相続人の数が2人のAさんの場合、死亡保険金1,000万まで0円評価にすることができるわけです。
2,000万円の預金のうち1,000万円を死亡時に相続人が受け取れる保険金に変えておくだけで、総財産を3,500万円まで圧縮することが可能です。
これで基礎控除額以下となり、現時点でのAさんの相続税の心配は無くなるでしょう。


的確な相続税対策は、専門家に一度相談を!
Aさんのケースは、ごくごくシンプルなケースです。
当然ですが、100人いれば100通りの財産状況があり、100通りの相続税対策があります。
そのため相続税対策は、専門家にしっかりと相談し、あなただけの対策を見つけるのが最も良い方法だと思います
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