
「相続放棄なんて、借金がある人がするものでしょう?」 多くの方がそう思われるかもしれません。しかし実際の現場では、 借金が一切ないのに相続放棄を検討するケースが、意外と少なくありません。 今回ご紹介するのは、そんなご相談のひとつです。 兄弟に起きた、ある相続の話 登場人物は兄のAさんと弟のBさん。 Aさんは独身で子どもがおらず、両親も亡くなっているので、相続人は弟のBさんただ一人でした。 Aさんが亡くなった後に判明した財産は、預金が約1,500万円。一見すると「何も問題のない相続」に見えます。 しかし、問題は、Aさんが所有していた多数の山林でした。 子どもたちに、この負の遺産を遺したくない この山林は、元々父が所有しており、Aさんが相続したものです。 現在その山林は売却も難しく、管理費や固定資産税だけがかかり続ける状態の、いわゆる負の遺産というものです。 Bさんは直感的に思いました。 「自分が相続すると、いずれは子どもたちにこの山林が引き継がれてしまう…」 「これは避けたい」 そこでBさんが考えたのが、相続放棄でした。 借金は一切ないものの、将来の子どもたちへの負担を考えると、放棄した方が良いのではないかと悩まれていたのです。 しかし、相続放棄をすると山林だけでなく1,500万円の預金も相続出来なくなります。 この預金をすべて手放すのは、あまりにももったいない話でした。 何とか山林だけ放棄して、預金は相続する方法はないのかと、Bさんは専門家に相談に行きました。 内容を聞いた専門家は、一つの解決策を提案しました。 「まず一旦全て相続する」という選択肢 それは、「まずBさんがAさんの全財産を相続する」というものです。 山林も預金も、一旦はすべてBさんが相続するのです。 その後、Bさんは計画的に預金を子どもたちへ生前贈与していきます。 そして、将来Bさんに相続が発生した時点で、Bさん名義の預金はほとんど残っていない状態を作るのです。 そして、子どもたちにBさんの相続放棄してもらうのです。 こうすることで、結果として、「山林のみ放棄してAさんの預金1,500万円だけを次世代に残す」という形を実現できる可能性が出てきました。 相続は、100人いれば100通りの悩みがあります 相続は、決して「お金があるか、借金があるか」だけの問題ではありません。 家族構成も、財産の内容も、想いも、すべてが違います。 Bさんのように、複雑な葛藤を抱える方も少なくありません。 相続放棄が正解になることもあれば、放棄せずに工夫することで、守れる未来もあります。 大切なのは、自分の状況に合った選択肢を知ることです。




