相続の仕事を長年しておりますと、様々な都市伝説のような相続の話を耳にします。 「あ、それ違うんだよな・・」と思うことも多々あります。 今回はそんな都市伝説に惑わされて相続でお困りにならないよう、よく耳にする相続の噂のウソやホントを解説していきます。 死亡届を役所に出したら、銀行の口座は自動的に止まる! ウソ! 役所と銀行はつながっていないので、死亡届を提出しただけでは故人の口座は凍結されません。口座が凍結するのは、銀行に死亡の事実を伝えた場合です。 これは電話などで「父が亡くなったんですが、どうすればいいですか?」といった質問をした場合でも当てはまります。 将来的にはマイナンバーカードの普及により変わるかもしれませんが、2023年5月時点では、死亡届を出しただけで口座凍結されることはないのです。 不動産の権利書を紛失したら、相続で不動産の名義変更はできない! ウソ! 相続によって不動産の名義変更をすることを「相続登記」というのですが、相続登記には原則不動産の権利書は必要ありません。 場合によっては提出を求められる場合もありますが、基本的には不要です。 相続登記はしなくても大丈夫! ウソ! 今までは義務では無かったのですが、相続登記は令和6年4月1日から完全に義務となります。(怠っている場合は、相続人全員がそれぞれ10万円ずつの過料) これは不動産1つにつき10万円ずつなので、複数の不動産の名義がそのままなら、かなりの金額となるでしょう。 故人の名義のままの不動産がある場合は、今のうちに早急に名義変更をしておきましょう。 遺産分割は法定相続分で分けなくてもいい! ホント! 法定相続分とは、故人の財産の取り分として法律上定められた割合です。 例えば父が亡くなり、母、長男、次男が相続人の場合、法定相続分は母「2分の1」、長男「4分の1」、二男「4分の1」となります。 「法律で決まっているんだから必ずこの割合でないといけない!」と思い込まれている方もおられますが、そんなことはありません。 遺産分割は相続人間の話し合いの結果が最も優先されます。 「母が全部相続することに相続人全員が納得している」のなら、母が全て相続しても何の問題もないのです。 内縁の妻や夫には相続権がない! ホント! 残念ながら、内縁の方には相続権はありません。どれだけ長年連れ添っていたとしても、一円も相続できないのが現状です。 内縁のパートナー名義の家に住んでおり、もしその名義人が亡くなった場合、家の名義はそのパートナーの相続人のものになるため、出ていかないといけないなんてことも起こりえます。 内縁関係でも相続するためには、遺言書を書いておくしか方法はありません。 特別縁故者といって、「故人と関係が深かった者が相続できる」という制度もありますが、これは故人に相続人が一人もいなかった場合にのみ適用されるものです。 相続人が全くいないというのは、ご自身でコントロールできることではないので、やはり遺言書を書いておくことが確実でしょう。
巷にあふれる相続手続きのウソホント!
2023.05.23