遺言書は「自筆」か「公正証書」か、どちらがいい?

遺言書は「自筆」か「公正証書」か、どちらがいい?
遺言書は大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

簡単に説明すると、自筆証書遺言は自分で書くもので、公正証書遺言は公証役場で公証人に自分の遺言内容を伝えて作成してもらうものです。
どちらがいいの?とよくご相談されるのですが、長年相続のサポートをしてきた身からすると、公正証書遺言を強くお勧めしています。

その理由は二つありますので、解説していきます。


公正証書遺言を選ぶべき理由①『実際の手続きのスムーズさ』が段違い!

一つ目は、実際の手続きのスムーズさが大きく違うことです。
公正証書遺言の場合、遺言者が亡くなったら、すぐに遺言書の内容に沿った銀行の解約手続きや不動産の名義変更を進めることができます。
しかし自筆証書遺言の場合、遺言者が亡くなったらまずは家庭裁判所で『検認』という手続きが必要になります。

検認とは、家庭裁判所に「こんな遺言書がありました」と届け出ることで、相続人全員に「○月○日に遺言書を開封するので家庭裁判所まで来てください」と通知がいくものです。

この検認ですが、相続に必要な戸籍謄本一式も提出する必要があるため、完了までに数カ月かかることも珍しくない、時間がかかる手続きです。
ちなみに、最近「生前に自筆証書遺言を法務局に預けておく」という制度が始まりました。この制度を利用すると、検認は不要となります。


公正証書遺言を選ぶべき理由②自筆で書かれた遺言書には不備が多い!

二つ目は、『自筆で書かれた遺言書には不備が多い』ことです。
実は遺言書は、ほんの少しの書き方の違いで、実際の相続に使えない可能性があるのです。

公正証書遺言の場合は、法律的に有効な文章を公証人が作成するのでその心配はありませんが、自筆の場合は不備が非常に多いのが現実です。
最悪なのは、長い時間をかけて検認をした後に、その遺言書を持って銀行や法務局などに行くと、「この内容では手続きできません」と言われるケースです。

検認とは遺言書が有効か無効かを判断するのではなく、遺言書の内容を相続人に知らせて、偽造等を防止する手続きなので、「検認後に使えないことを知った」というのは、意外とよくあるケースです。

こうなると、相続人間で遺産分割協議をしないといけないので、相続人の負担は増えてしまいます。
自筆証書遺言のメリットは「自分一人で手軽に書けること」とよく言われますが、手軽に書けるのはメリットでもあり、デメリットでもあるのです。

公正証書遺言は公証役場で作るため費用はかかります。しかし逆に言えば費用以外のデメリットは、ほぼありません。

「遺言書が実際の相続には役に立たなかった」「遺言書が不完全だったため、逆にトラブルに発展した」・・なんてことになり、残された方が困らないように、遺言書を作る際は一度専門家に相談することをお勧めしています。

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