戦争で焼失した戸籍が招いた、想定外の相続トラブル

ある日、一人の女性Aさんが、静かにこう切り出されました。
「主人が亡くなったのですが、相続のことで何から手をつけていいのか分からなくて……」

Aさんはご主人と二人暮らし。お子様はいらっしゃいません。

この場合、法定相続人は配偶者であるAさんと、ご主人のご両親になります。しかし、ご両親はすでに他界されていました。
次に相続人となるのは、ご主人の兄弟姉妹です。

相続は「兄弟姉妹」に…ここから一気に複雑化
ご主人のお父様には三度の再婚歴があり、異母兄弟が存在していたのです。

さらに、兄弟の中にはすでに亡くなっている方もおり、その子である甥や姪が「代襲相続人」となります。

相続人が何人いるのか、誰が相続人なのか――誰にも即答できない状況でした。
相続人を確定するため、戸籍の収集を始めました。

ところが、取り寄せた戸籍の中には「戦争による焼失」と記載されたものがいくつもあり、いくら調べても過去を辿ることができません。
相続人を確定できないということは、遺産分割協議書が作れないということ。

つまり、不動産の名義変更も、預貯金の解約も、一切進められないのです。
Aさんは不安そうに言われました。
「このまま、何もできないのでしょうか……」

専門家連携で切り開いた解決と、残された本当の課題
私たちは行政書士・司法書士と連携し、解決策を検討しました。

そして、遺産分割協議書に、
「戸籍上、一部相続人の確定ができないものの、法定相続人は本協議書に記載された者以外に存在しないことを、相続人全員で確認した」
という一文を明記することで、手続きを前に進めることができたのです。
無事に相続手続きが完了したあと、Aさんはぽつりとおっしゃいました。

「私に何かあったら、また同じことになりますよね……」

その通りです。
Aさんに万一のことがあれば、今度は甥や姪が相続人となり、今回以上に大変な手続きを背負うことになります。

だからこそ、私たちはAさんに公正証書遺言の作成をお勧めしました。
遺言があれば、相続人調査に悩むことも、複雑な協議に時間を奪われることもありません。

「残される人のために、今できる準備」――それが遺言です。

相続は、起きてからでは遅いことが多くあります。

少しでも不安を感じたら、どうぞ早めにご相談ください。
専門家が、あなたとご家族を守るお手伝いをいたします。




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